「いま買っても大丈夫だろうか?」「そろそろ手放した方が良いのでは?」など、投資をすると不安がつきまといます。機械的に積立投資をするつもりでも、値下がりが長く続くと「積立投資を続けても大丈夫なのか?」などと、不安に思うことも。それは「今の相場がどういう状況なのか」を把握できないから引き起こされている不安です。現在の相場状況を冷静に把握できるようになれば、今後の展開も“ある程度”ですが予想できるようになるかもしれません。

株式相場にも四季がある!?

株式相場には四季のようなものがあります。株式相場は「金融相場(春)」「業績相場(夏)」「逆金融相場(秋)」「逆業績相場(冬)」という4つの相場ステージ(季節)に分類することができるのです。この4つの相場ステージは、必ずではないのですが四季のように「金融相場(春)→業績相場(夏)→逆金融相場(秋)→逆業績相場(冬)→再び金融相場(春)」と順番通りに循環するのが一般的です。

では、各相場ステージの特徴を見てみましょう。

金融相場(春)

相場の春と言える時期です。春の入り口は不景気の真っ只中にやってきます。中央銀行が景気を刺激するために政策金利を引き下げたり、市中に資金供給するなどの金融緩和策を講じたりします。また政府も大型経済対策を打ち出すなど、景気を刺激しようとします。その結果、市中が金余り状態になり、融資が増加。企業業績が回復するなど、今後の景気回復期待が高まり株式市場にお金が流入。全体的に株価が上昇しやすいステージですが、金利低下メリットを受ける企業や成長株などが相対的に買われやすい傾向にあると言われています。

業績相場(夏)

金融緩和策や経済対策の効果が現れ始め、実際に景気が回復するステージです。金融相場は期待感から株価が上昇しますが、業績相場は実際に企業業績が好調になることで株価が上昇します。そのため、金融政策や経済政策よりも個別企業の業績変化に株価が反応しやすくなります。好調な企業業績を背景に依然として成長株優位の相場が続きますが、景気の過熱感が高まってくると次にやって来る逆金融相場に向けてバリュー株が選好され始めます。

逆金融相場(秋)

金余り状態や景気や企業業績の拡大が続くとインフレにつながりやすくなります。このため中央銀行は政策金利を引き上げたり、市中から資金を回収するなど、金融引き締め策を講じることでインフレを抑制しようとします。このため市中金利が上昇しやすくなり、景気や企業業績が減速するのではないかという懸念が台頭し始めます。株価はピークアウトし、下落トレンドに入りやすくなるステージです。これまで相場をけん引していた成長株が売られやすくなり、金利上昇に強い好財務企業やバリュー株が選好されやすくなります。

逆業績相場(冬)

現実に景気や企業業績が悪化することで、引き続き株価が下落しやすいステージです。景気悪化を受け金融引き締めが終了しますが、景気や企業業績の先行き不安から株から債券に資金が流れるなどの「質への逃避」が起きやすく、金利の低下傾向が始まります。また、景気との連動性があまりないとされる医薬品関連株などが相対的には選好されやすいと言われます。場合によっては、景気や企業業績の悪化などから何らかのバブルが弾け、信用不安などに発展する現象、いわゆる「経済ショック」がこのステージに起きることがあり、4つ相場サイクルのうち最も注意を要するステージです。

相場の変動に振り回されないためには

資産運用の失敗は、多くの場合、取らぬ狸の皮算用ばかりすることから起こります。値上がりを期待するばかりで、値下がりしたときにどう振る舞うのか、心の準備をしていないのです。そのため、期待に反して大幅な値下がりに直面すると心や家計が耐えられなくなり、冷静さを失い途中で売却してしまうのです。

こういった失敗をできるだけ避けるためには、まず相場にも四季があること知っておくことです。残念ながら相場はいい時期ばかりではないのです。現在の相場状況は4つのステージのうちどこにあるのかを見極めましょう。そうすれば、今後はどのような展開になりそうなのか、冷静に想定することができるようになるはずです。

例えば、現在は逆金融相場にあるとしましょう。金利の引き上げなどの金融政策についてのニュースに市場が反応しやすい時期です。金融政策のニュースに対する市場の反応が鈍くなってくると、次は逆業績相場のステージに入る可能性を考えるべきです。逆業績相場に入ると、企業業績や経済指標のニュースに市場が敏感に反応し始め、悪いニュースが株価の大幅な下落につながりやすくなります。

こうした状態に備えるならば、徐々に株式の比重を下げてキャッシュや高格付け債券へシフトすることを検討してみましょう。また、逆金融相場は積立投資も含めそろそろ出口を検討するときです。これ以上は大きな上昇は期待できそうにないどころか、しばらく厳しい相場になる可能性が高い、と予想されるなら、早めに一部売却し、ある程度の利益を確定しておくといった検討もできるでしょう。

さらに、逆業績相場で暴落に巻き込まれた場合には、どのような想定ができるでしょうか。株価の暴落を受け、思い切った金融緩和策や大型経済対策などが出される可能性が高くなります。その際には、金融相場に発展するというシナリオが描けるでしょう。そのタイミングで思い切って株式への比重を高めるために、キャッシュポジションを増やしておくといった対策も検討できるでしょう。

ただ、実際の経済はもっと複雑な動きをするので、相場の四季さえ知ってさえいれば万全と言うわけではありません。また、この通りに相場が展開していくとも限りません。相場の四季を基本パターンとし、想定と違う動きになった場合に何が狂ったのか見極めましょう。そして、その原因によって、どう振る舞えば良いかを考えることで、冷静に相場の変化に対応しやすくなるはずです。