不動産に投資する際にはその国や地域の人口の推移を知ることはとても大切です。人口が増えていくならば、新しい住宅需要が自然と生まれていきますので不動産市況にはプラス材料です。逆に人口が減少するならば、住宅の需要が減ることにつながります。新しい住宅を購入する需要が減るだけでなく、賃貸住宅の需要も減ります。それだけでなく、既存の住宅も廃棄して住宅数を減らしていく必要すら出てくるでしょう。需要のない住宅地は人がいなくなりゴーストタウン化するといった現象も目にするようになります。

日本は本格的な人口減少時代に入った

2010年の日本には1億2800万人を超える人口がいました。ここをピークに日本の人口が減少を続けています。総務省統計局によると2021年末には1億2538万人にまで減少していると推計されています。たった10年あまりで日本の人口は約300万人減少したことになります。実はこの間、同じペースで減少してきたわけではありません。2021年のたった1年間で64万3809人も減少しています。減少スピードはさらに加速を続け、2022年には1年間で80万人以上の人口が減ると予想されています。今後は毎年中核都市が一つずつ消滅するペースで人口が減っていくのです。まさに本格的な人口減少時代へ突入したと言っていいでしょう。

日本の不動産市場は2極化が進む

とは言え、日本の地域別にみると人口減少している地域だけではありません。たとえば東京都はコロナ禍で2021年から人口減少に転じたものの、横ばいに近い動きをしています。コロナ禍が終息していけば、再び増加に転じる可能性が高そうです。他にも沖縄県のように流入超過が続き人口が増えている都道府県があります。このように地域別にみていくと、まだまだ需要が増えていく地域も見つかりますが、こうした地域にお金が集中すると局地的なバブル状態が発生しやすくなります。

一方で、人がどんどんいなくなる地域では廃墟が増え、ゴーストタウン化することも予想されます。こうした地域では、不動産は資産ではなく負債。貸したくても貸せない、売りたくても売れない。仕方なく保有していると不法占拠されたり放火されてしまうリスクがあるだけでなく、固定資産税などのコストがかかり続けてしまいます。これでは売れるうちに売った人が勝ちの「ババ抜きゲーム」のような状態となってしまいます。長期的に人口減少が続くことはこんなにも恐ろしいことなのです。日本で不動産投資をするなら、地域の将来性をしっかりと見極める眼力が大切なのです。

人口減少は経済規模の縮小へもつながりやすい

人口減少の影響は不動産への直接の需要の減少だけではありません。国の経済規模の縮小にもつながりやすくなります。人が減れば単純に住宅だけでなく、食べるもの着るものなど生活にまつわるすべてのものやサービスへの需要が減ってしまうからです。中でも生産年齢人口(定義は15歳以上~65歳未満の人口)の減少は深刻な問題です。この年代の人の多くが働いて給料を得て、消費もする。その国の経済の主役なのです。

日本の生産年齢人口のピークは1997年でした。それ以降、生産年齢人口は減少を続けています。日本政府はさまざまな経済政策を取って経済成長を目指していますが、この生産年齢人口の動きと呼応するように、日本の経済成長は止まったままなのです。

日本の国内総生産(GDP)で見ると日本は2010年に中国に抜かれました。それだけでなく、今や中国の約4分の1にまで下がっています。日本の経済が成長できずに苦しんでいる中でも、他の国の経済は順調に成長を続けているのです。日本は国際的に豊かな国から、貧しい国へと転落している途中なのかもしれません。経済力の強さは不動産市場の強さにもつながりますので注意が必要です。

データ:OECD

日本の外に目を向けると人口増加を続ける国がある

世界的に有名な投資家ウォーレン・バフェット氏は、以前から、日本の将来に対してネガティブな見方をしています。そして、今年に入って、テスラ社CEOのイーロン・マスク氏も日本の将来に悲観的な見方を発しました。

『”At the risk of stating the obvious, unless something changes to cause the birth rate to exceed the death rate, Japan will eventually cease to exist. This would be a great loss for the world.” (訳:当たり前のことを言うようだが、出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ存在しなくなるだろう。これは世界にとって大きな損失になる。)』

この記事に対しては「移民を受け入れれば解決すると」という反応コメントもありましたが、日本人の国民性を考えると、実際には難しいと思われます。恐らく私たちは人口減少の現実を受け入れて生活をしていくことになるのではないでしょうか。

一方で、海外に目を移すと人口が増えて続けている国もあります。その多くが新興国ですが、先進国でありGDP世界ランキング1位のアメリカも人口増加が続く国の一つです。アメリカの人口構成を見ると労働力となる20代~30代のミレニアム世代、続くZ世代が全体の半数以上を占め、とても理想的な人口構成となっています。自然な人口増加となっているだけでなく、移民政策がしっかり根付いているという点もアメリカの今後の人口推移の下支えになっています。現在でも年間100万人の移民が必要だと言われていることを勘案すると、今後も順調にアメリカの経済規模が拡大していくことが予想されます。

データ:国連 / PopulationPyramid / US Census

人口増加はやはり不動産市況を活性化させる

人口が増え続けているアメリカですが、2010年から2020年までの10年間で人口が2270万人増加したので、年200万人を超えるペースで人口が増えました。2021年の人口増加はコロナ禍ということもあり前年比39万2000人増(+0.1%)と統計を取り始めて以来最小幅となりましたが、それでも40万人近く増加するのはさすがです。

毎年大都市が一つずつできていくようなペースの人口増加をしていれば、住宅の需要が旺盛なはず。実際にアメリカでは、現時点で住宅が約400万戸不足している状態と言われています。流通している不動産の8割を中古住宅が占めるアメリカですが、住宅価格は年平均約4%のペースで上がっています(コロナ禍の2020~2021年を除く)。家賃も上昇し続けています。空室増、家賃下落に悩むことの多い日本とは不動産市況が随分違います。

家賃の値上げ、不動産価格の上昇が続くことは不動産投資にとって理想的な環境です。人口増加を続けるアメリカでの不動産市況から「不動産投資をするなら人口増加が続く地域や国を狙え」が不動産投資の鉄則であることが言えるでしょう。