家計のご相談をお受けしていると実にさまざまな問題が持ち込まれます。それぞれの問題に対し解決策を探っていくわけですが、こうしたときに役に立つのが「会社経営を参考に考えてみる」ことです。家計の問題を会社経営に置き換えてみると、どうしたらよいか分かりやすくなります。

家計の経営をしている自覚を持とう

まず、あなたの家計の経営者は誰でしょうか。結婚していればご夫婦ですし、独身であれば自分一人会社です。

では、経営者であるあなたは、企業理念や経営計画を持って家計を経営しているでしょうか。企業理念は家計で言うとライフデザイン、経営計画はライフプランと言います。経営計画すら立てていない会社の経営が上手くいくと考える人は少ないはず。ところが、ほとんどの人は自分の家計を経営するにあたってはそんなことすら考えていません。

ライフデザインというと分かりにくいですが、自分や家族が実現しようとしている価値観、なりたい姿と言ったらよいでしょうか。ただ、難しく考える必要はありません。あるご家族は色紙に家族の手形を押し真ん中に「明るく、仲良く、元気よく」と書いてありました。これは家族が目指す姿であり、この家族のライフデザインと言ってもよいものでしょう。昔であれば「家訓」と呼ばれる家族の道徳的な規範などを定める家族もありました。

ライフデザインが定まれば、そのライフデザインを実現するための具体的な計画を立てます。それが家族の経営計画であるライフプランです。たとえば、5年後にはマイホームを購入する。頭金として500万円以上用意する、と言ったものです。家族のこれから30年40年先くらいまでの人生を考え「いつ」「何のために」「いくらかかる」のかをまとめていくと、具体的なライフプランになっていきます。

経営会議すらしたことがない家庭が大半

経営計画を立てていないということは、人生で経営会議を開いたことがないのではないでしょうか。私が経営している会社は零細企業ですが、毎週のように役員が集まって経営会議をします。計画通り進んでいるのか、進んでいないなら何が問題なのか、解決策はあるのか、などと話し合います。それでも、会社の経営はなかなか上手くいきません。

それなのに、経営者である夫も妻も、それぞれ勝手な方向を向いて生活しているわけです。これでは家計の経営が上手くいくはずがありません。本来であれば、夫婦が共通の価値観を持ち、共通の目標に向かって力を合わせて、家計を経営することが求められるはずです。家庭でも日々さまざまな問題が発生するので、経営陣が力を合わせて問題に対処していくべきなのです。

家計でも予算を立て経営サイクルを回そう

会社は経営計画を実現するために、予算を立て、実行していきます。会社における売上は家計の中では収入です。そして、会社の経費は家計の支出。会社の利益は家計の貯蓄に相当します。

実は、この中で重要なのは貯蓄です。ライフプランを実現するためには、多くの場合でまとまったお金が必要です。収入が多いほど貯蓄するのは楽になりますが、収入が増えようが減ろうが、必要な貯蓄を確保することがライフプランの実現には重要なのです。

そのため、今年は貯蓄をこれだけ確保する。収入はこの程度だろうから、支出はこの程度の中でやりくりしなくてはならない、といった予算を立てることになります。そして予算どおり実行できたかどうか、経理、決算し確認します。その結果をフィードバックし経営計画を修正していきます。これが会社の経営サイクルです。

家計においても家計簿をつけている人は多いものです。ところが、こうした経営サイクルがなければ、家計簿はただの日記帳やメモ帳としてしか機能していないことが多いものです。これは残念なことです。

実現したいライフプランを立て、予算を作り、それを実行できたかどうか夫婦で確認し、問題があれば対処していく。家計でもこうした経営サイクルを作ることが理想の姿です。この家計経営の理想形と比較することで、皆さんが抱える家計の問題を整理してみると、解決策が見えやすくなりますよ。